本稿はTeX & LaTeX Advent Calendar 2025初日の記事です。今年もこの季節がやってきました🥳🎉🎄
いきなり私事で恐縮ですが、当ブログ「ラング・ラグー」は開設から10年目を迎えました! これまでたくさんのTeX/LaTeX関連の記事を投稿してきましたが、読者の皆さんに見守られながら、息長く運営できていることを嬉しく思います😄
そんな個人的なことでアドベントカレンダーの初日を飾るのかい!——そう思ったそこのあなた! その通りですが、その通りではありません。ブログ10年目に合わせて先月さまざまなリニューアル作業を行いましたが、その一環で当ブログで特にアクセス数の多い過去のTeX/LaTeX記事の大幅リニューアルを行いました。具体的には、次の3つの記事1をリニューアルしています。
- TeXとLaTeXの違い(2016-12-19公開)
- TeX言語者のためのexpl3入門(2018-04-28公開)
- MacTeXをおすすめできる場合とそうでない場合(2020-07-07公開)
これらの記事は、ラング・ラグーの記事の中ではアクセス頻度が高い、つまり平たく言えば「人気」なわけですが、それもそのはずこれらは当ブログの記事の中では比較的TeX/LaTeX初心者向けのものです。だから間口も広いし、ありがたいことに色んなところで参照いただいているので、必然的にアクセスも増えるわけです。
しかし、それは同時に、これらの記事の影響力が相対的に大きいことも意味します。ブログという形態でありながら、過去記事に大きく手を入れるのは異例で賛否あるかもしれませんが、私としては初心者にミスリーディングだったり、古い情報を提示し続けたりする方が害が大きいように思われたので、リニューアルに踏み切りました2。また、一部はいま読み返すと「ちょっと刺々しい」と感じる部分があったのも理由の一つです。若かったので仕方がないとも言えますが、人間は成長できる生き物です。私は誤りは正せる人間でありたい。よって、表現を穏やかにした箇所も多々あります。
三つの記事の中でも特にアクセスの多い『TeXとLaTeXの違い』についてはかなり気合を入れてリニューアルしています。脚注の量もめちゃくちゃ増えています。この記事の本文は基本的にはTeX/LaTeX初心者向けですが、脚注は中上級者向けです。逆に、「それら脚注の内容など全部知っている! 当たり前だ!」という方はおそらく私よりもTeX/LaTeX事情に詳しいです。さすがです👏
ということで、TeX/LaTeX有識者の皆さんにも読み応えのある内容になっているのではないかと思うので、ぜひいま一度目を通していただけたら幸いです。アドベントカレンダーに便乗して皆さんをデバッガーにしようというわけでは決してありません!——決してありませんが、もしおかしなところを見つけたら、何らかの手段3でこっそり教えていただけるととても助かります。どうかお手柔らかに🙏
さて、辛うじてでもTeX/LaTeXの技術的な話は以上です。ここから先は当ブログに関する個人的な話や観念的な話題など、人間くさく有機的な話題ばかりです。「技術的な話にしか興味がない!」というインタプリタのような方は、ぜひ本稿を読むのはここで切り上げて上記リニューアル記事をお楽しみください! \endinput
ラング・ラグーの9年とTeX
最初の記事を投稿したのが9年前(2016年)の11月だったので、今月からちょうど10年目に入ったということになります。このブログでは当初もっと雑多な内容を扱うつもりだったのですが、結局ほとんどの記事は何らかの意味でTeX/LaTeX関連になってしまいました。
ラング・ラグーの副題には、開設当初から「ニッチな話題をつぶさに語る」を掲げており、とにかく類似の記事が日本語インターネット上にないことを〈中心命題〉として記事を作成してきました。そうすると必然的に、私がほかの著者よりも詳しいか、少なくとも興味の指向がユニークな話題として、TeX/LaTeX関連が選ばれやすい状況でした。
この傾向は、今後は少し変化するかもしれませんが、それでもTeX/LaTeX関連の記事がまったく出てこなくなることはないように思います。少なくとも、去年始めた「LaTeX News斜め読み」シリーズは当面は更新を続けたいと考えています。国際的なLaTeXコミュニティの動向を、日本語圏に伝えるメディアというのはほとんど存在せず、このブログがほぼ唯一その役割を担っているという自負があるからです。
そして、日本語TeXコミュニティがまったく国際的なコミュニティと断絶してしまうというのは大きな問題だろうと私は思います。TeX関連に限らず、さまざまな技術領域の日本語圏コミュニティは歴史的に、これまで何度も国際的に孤立し、グローバルな取り組みに参加せず独自フォークの開発を続け、それが技術的負債の山となり、やがては維持できなくなって崩壊するパターンを繰り返しています。私は、できれば日本のTeXコミュニティに同じ轍を踏んで欲しくありません。
これは特定の開発者や貢献者が善だとか悪だとか、誰か個人が頑張れば済むであるとか、そういうレベルの話ではないのだろうと思います。コミュニティに属する一人ひとり——そう、あなたのことです!——の意識が、外の世界に目を向け、逃げずに課題を直視し、未来志向で行動できる成熟したものでなければ、問題が根本解決することはないでしょう。私もできることをしていますが、自分の言語運用能力と軽いフットワークを活かし、海外のTeXコミュニティで起きていることを皆さんに可能な限りお伝えし、啓蒙していくことが単独でできる限界だと感じています。こうした情報をどのように受け取り、活用するかは皆さん次第で、それに日本のTeXの命運が懸かっています。
ところで、ラング・ラグーの更新ペースはこれまで決して一定ではありませんでした。開設から日の浅い2016–2019年頃は結構頑張って年中いつでも記事を投稿していましたが、コロナ禍以降は専ら「TeX & LaTeXアドベントカレンダー」が開催される12月しか更新されないような状態に落ち着いてしまいました。大学院での研究が忙しかったことや、そもそも世間的にも個人ブログ文化がほぼ廃れてしまいモチベーションを維持できなかったことが主な原因です。
最近は本業とは離れたところで、またアフィリエイトも含めて営利目的でもない、何かクリエイティブな活動をしたい欲求が少し出てきているので、今後はもう少し高い頻度で、雑多な内容の記事を投稿できたらと考えています。といっても、毎月更新されるような状態にはならないでしょうけども。
今回のブログリニューアルについて
さて、少々重い話もしてしまいましたが、最後は淡々とリニューアルの具体的な話を披露して締めくくりたいと思います。
最初の記事で説明しているように、当ブログは静的サイトジェネレータHugoで生成したコンテンツを、GitHub Pagesにホストさせることで運営されています。この技術的構成が9年に亘り廃れることなく、安定状態を維持していることは私にとって幸運なことでした。あるいは、結果論ながらも当時の技術選定がかなり適切だったと言ってもよいかもしれません。もっとも、原稿データはすべてローカルにMarkdownで持っているわけですし、ドメインwtsnjp.com4はもちろん私が所有・管理しているので、原理的にはHugoの開発が止まったりGitHub Pagesがサービス終了したとしても、代替物(最悪、自前のWebサーバー)を用意して運営を続けることは常にできるようにしています。
そういうわけで、ブログの主要構成技術は開設当初からまったく変わっていませんが、今回見た目のテーマ(デザインやレイアウト)については、裏にも表にもさまざまな変更を加えました。まずHugoテーマとしてAngel’s Ladderというものを初期から採用していたのですが、本家は9年間ほぼメンテナンスされていないことと、その間も私がこのブログ用にパッチを当て続けてもはや別物になってしまったので、独立した「テーマ」としての運用をやめて私のパッチ版をブログ本体に統合してしまっています。またしても〈構造とスタイルの分離〉の夢は敗れました。ざんねん🙃
視覚的な部分でも、テーマカラーを私のアイコンに合わせたものに変更したほか、インライン/ブロックコードの枠線を取り除き、より現代的で、テキストを追う読者の目線を邪魔しないものになったと思います。また飾り枠の類もGitHubのalertブロックを丸パクリ参考にして新たに組み込みました。かなり目立つ要素なのであまり乱用しないようにしたいところですが、要所要所で活用したいと思います。そのほか、Disqusフォーム(コメント欄)やSNSシェアボタンがサードパーティの埋め込みJavaScriptだったのですが、意図せず広告が表示されてしまう場合があることに気付いたため、前者は廃止5、後者は自作のものに置き換えました。私にとってこうしたフロントエンドの改善は、生成AIによってかなりできることが広がったからこそ実現したものなのですが、その話はまた別の機会にしたいと思います。
内容面でのリニューアルについては、本稿の前半部で紹介したように、過去記事のうち特によくアクセスされているものは大幅にリニューアルをしました。そのほか、おそらく誰も読んでいない/存在すら知られていないのではないかと思われるAboutページ「このブログについて」も密かにアップデートされています。書いた私すら忘れかけていた9年前の自分の作文は、読むに耐えないものかと思いきや、確かに少々荒削りな部分はあったものの、いまの私が読んでも心に響くものでした。——まさか自分のブログで自己再帰し、古きを温ねて新しきを知ることになろうとは。
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Google Analyticsによるアクセス解析に基づく、当ブログの累計歴代トップ3記事です。 ↩︎
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大きく手を入れた記事の末尾には念のため「主な変更履歴」セクションを設けることにしました。ただ「主な」というからには細かな誤字脱字の修正まで逐一列挙してはいません。過剰な形式主義に陥っても仕方がないですからね。 ↩︎
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TeX Users’ SlackやBlueskyやTwitter/XのDM、電子メールなど。Knuthではないので比較的まめに対応しています。 ↩︎
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私のドメイン
wtsnjp.comの.comの部分はComputerやComputationalの“com”です。Commercialではありません。(強弁) ↩︎ -
正確には、Disqusフォームを削除したのは今回のリニューアル作業への着手よりは半年ぐらい前(2025年3月)のことでした。 ↩︎