本稿はTeX & LaTeX Advent Calendar 2021の9日目の記事です。8日目はZRさんでした。10日目はt-kemmochiさんです。
(La)TeXの新作パッケージは、クリスマスなど特定の時期に限らず1年を通して日々CTANやTeX Liveに登録されています。今日の記事では、そうした新作パッケージ情報をいち早く入手するにはどのような手段があるのか、筆者が知っている情報ソースを特別に大公開しちゃおうと思います!(そんなにもったいぶるような内容はありません……)
CTAN-annメーリスを購読する
多くの人に広く使われるべきと考えられる (La)TeXパッケージは、ほとんどの場合CTANにアップロードされています。今日では「CTANにないパッケージは、存在しないのと同じ」とさえ言われています(言われてません)。ともかく、新作パッケージ情報をなるべく漏れなく拾おうと思えばCTANの更新情報を追うのが最も確実な方法になることはほとんど疑いの余地がありません。
CTANの更新情報はCTAN-annというメーリスに投稿されます。これを購読すると、CTANに新規に登録されたパッケージや更新されたパッケージの情報を逐一、もしくは1日1回にまとめて受け取ることができます。パッケージ名・作者情報に加えて、CTANに登録されるメタデータ(パッケージの短い説明やアップデート内容を含む)も配信されます。同様の内容はCTANのウェブサイトでも閲覧できます:
基本的にはCTAN-annの購読が一番シンプルで確実なのですが、新規登録のパッケージだけでなくアップデート情報も含まれているのと、とにかく流量が多いので真面目に追うのが大変なのが少しデメリットです。稀にですがライセンスの関係でCTAN収録されてもTeX Liveには収録されず(個別にインストールする等しないと)手許では使えないパッケージの情報が入ってくることもあります。
最先端のTeX Liveを追いかける
最先端のTeX Liveを追いかけても、もちろん新作パッケージ情報を得ることができます。情報の質・量・速報性はCTAN-annを購読するのとあまり変わりありません。CTAN-annの更新情報は、ミラーの更新を待つためパッケージ作者からのアップロードを受けてCTANチームが登録処理を行ってから約24時間後に流されるため、タイミングによってはCTAN-annに情報が流れるよりも早く新作パッケージが入ってくることもあります。
最新TeX Liveを追いかける方法は色々考えられますが、一番簡単なのはSVNリポジトリを普通にブラウザで眺めることでしょうか。あるいはシンプルにtlmgr updateによるTeX Liveアップデートを頻繁に行うことで、手許の環境を常に最新に保つ方法も考えられます。その上で新規にインストールされたパッケージ名をキーワードにtexdocやtlmgr infoを用いてパッケージの詳細情報を閲覧します。ただし、tlmgr updateを頻繁に叩いても大丈夫なのは「利用可能なTeX Live環境が手許に複数ある」または「何か問題が発生してもすぐに自力で対処できる自信がある」人に限られるので、少なくとも一方の条件を満たせない場合は頻繁なアップデートは控えておいた方が安全でしょう。
TeX Liveユーザの場合は、当たり前ですが最新のTeX Liveの情報を追うことで常に過不足なく「自分の手許で使うことができるパッケージ」の情報を得ることができます。
TUG newsletterやTUGboatから情報を得る
CTAN-annやTeX Liveの更新頻度は極めて高く、また基本的に新作パッケージと既存パッケージの更新情報が入り混じって流れてくるので、日頃からTeX/LaTeXに強い関心があるという方でないと圧倒されてしまう恐れがあります。月1程度の頻度で新作パッケージの情報だけを得たいという場合にはTUG newsletterがおすすめです。これは世界規模のTeXユーザ会TeX Users Group (TUG)にメンバー登録すると毎月配信されるものですが、実はnewsletter自体はTUGメンバーにならなくても購読・閲覧することができます。
TUG newsletterはTUGの代表(2021年現在はBoris Veytsman氏)によって執筆されており、新作パッケージ情報に限らず、その月のTeX界におけるニュースが(ときにユーモアを交えて)綴られます。特に末尾には必ず1ヶ月間の新作パッケージの名前と短い説明のリストが記載されるので、ゆるくTeX界の動向を追いかけたい場合にはおすすめです。
速報性という意味ではやや劣りますが、年に4回刊行されるTeX専門のジャーナルTUGboatには毎回必ずThe Treasure Chestというコーナーがあり、ここにもその四半期の新作パッケージ情報がまとめられます。このコーナーの編者は長年TeX LiveチームをまとめているKarl Berry氏で、彼の独断と偏見によりおすすめパッケージには*印が付くという付加情報もあります。TUGboatは最新号はメンバーのみアクセス可能で、次の号が出ると一般に公開されるというしくみのため、非会員がこのコーナーで新作パッケージ情報を得ようとすると概ね3ヶ月〜半年以上の遅れが生じると思われます。
日本語で情報が欲しい場合
残念ながら、最新のTeX/LaTeXパッケージ情報を定期的・網羅的にまとめている情報ソースは私の知る限りありません。ある程度パッケージ数は絞られますが、新作も含め多くのパッケージの情報が得られる場所はいくつか存在します。
必ずしも新しいパッケージの情報を中心にまとめている、というわけではないかもしれませんが、幅広く数多くのパッケージを日本語で実例付きで紹介しているブログとしてはkonoyonohana氏の天地有情が有名です。
さまざまなパッケージの情報を求めてGoogle検索し、このブログに辿り着いたことがある方は多いのではないでしょうか。
それから手前味噌ですが筆者も不定期で「面白い」と思った新作パッケージの情報をTwitterに投稿しています。例えば、最近のものを具体的に挙げると……
PCにインストールされていてLuaLaTeX・XeLaTeXで利用可能なフォントを検索するLua製の新ツールらしい。すでにluaotfload-toolにもシステム内のフォント検索機能があるけれども、このツールは検索に特化している分シンプルで、部分一致でも検索できるのが利点らしい。https://t.co/FiUrmNXvU2
— ワトソン (@wtsnjp) December 5, 2021
Computer Modernに対応する黒板太字フォントbbold(Alan Jeffrey作)にウェイトを2つ足したbboldx(Michael Sharpe作)が登場したらしい。まじかよ……https://t.co/cHnsy1riFx pic.twitter.com/Lo0hLYEe2c
— ワトソン (@wtsnjp) October 20, 2021
LaTeXで「多相型の」コマンドを定義するパッケージらしい。なかなかテクいことをやっていそう。ところで既にLaTeX2eインターフェース(ユーザ用)を紹介した後に同等のexpl3関数(開発者用)を説明する場合「まあわかるだろ」でいいにしたくなるのめっちゃわかる。https://t.co/z6C6Wr8Neo pic.twitter.com/L4ZdfP5CDE
— ワトソン (@wtsnjp) October 17, 2021
真理値表をLaTeXで自動生成するパッケージらしい。ふふふ……https://t.co/gdZjp068jD#TeXLaTeX pic.twitter.com/Na8APEWpbU
— ワトソン (@wtsnjp) October 3, 2021
行番号付与のlinenoパッケージとamsmathを両立させるためのパッチパッケージ。最近のLaTeXカーネルのl3hooksを利用しているのではなく、etoolboxの機能でパッチしている模様。https://t.co/ExCHmxO4Cy#TeXLaTeX
— ワトソン (@wtsnjp) October 3, 2021
特に定まった検索用のハッシュタグはありませんが、私がパッケージ紹介する際はほぼ必ずCTAN上のパッケージ個別リンクを含めているので、Twitterで “from:wtsnjp ctan.org” のようなクエリで検索をすれば事実上の「パッケージ紹介リスト」が得られます。
ただし、私がTwitterで紹介するパッケージは完全に独断と偏見で選んでいるため、網羅性はまったくありません。また実際にパッケージの機能を試してみるでもなく、ドキュメントを斜め読みしただけで紹介していることも多いので、内容の正確性についても保証はできません……
皆さんのTwitterフォローをお待ちしております😁