新作 (La)TeX パッケージ情報の追いかけ方

2021-12-09 (updated: 2021-12-10)  #TeX  #LaTeX 

本稿は TeX & LaTeX Advent Calendar 2021 の9日目の記事です.8日目は ZR さんでした.10日目は t-kemmochi さんです.

(La)TeX の新作パッケージは,クリスマスなど特定の時期に限らず1年を通して日々 CTAN や TeX Live に登録されています.今日の記事では,そうした新作パッケージ情報をいち早く入手するにはどのような手段があるのか,筆者が知っている情報ソースを特別に大公開しちゃおうと思います!(そんなにもったいぶるような内容はありません……)

CTAN-ann メーリスを購読する

多くの人に広く使われるべきと考えられる (La)TeX パッケージは,ほとんどの場合 CTAN にアップロードされています.今日では「CTAN にないパッケージは,存在しないのと同じ」とさえ言われています(言われてません).ともかく,新作パッケージ情報をなるべく漏れなく拾おうと思えば CTAN の更新情報を追うのが最も確実な方法になることはほとんど疑いの余地がありません.

CTAN の更新情報は CTAN-ann というメーリスに投稿されます.これを購読すると,CTAN に新規に登録されたパッケージや更新されたパッケージの情報を逐一,もしくは1日1回にまとめて受け取ることができます.パッケージ名・作者情報に加えて,CTAN に登録されるメタデータ(パッケージの短い説明やアップデート内容を含む)も配信されます.同様の内容は CTAN のウェブサイトでも閲覧できます:

基本的には CTAN-ann の購読が一番シンプルで確実なのですが,新規登録のパッケージだけでなくアップデート情報も含まれているのと,とにかく流量が多いので真面目に追うのが大変なのが少しデメリットです.稀にですがライセンスの関係で CTAN 収録されても TeX Live には収録されず(個別にインストールする等しないと)手許では使えないパッケージの情報が入ってくることもあります.

最先端の TeX Live を追いかける

最先端の TeX Live を追いかけても,もちろん新作パッケージ情報を得ることができます.情報の質・量・速報性は CTAN-ann を購読するのとあまり変わりありません.CTAN-ann の更新情報は,ミラーの更新を待つためパッケージ作者からのアップロードを受けて CTAN チームが登録処理を行ってから約24時間後に流されるため,タイミングによっては CTAN-ann に情報が流れるよりも早く新作パッケージが入ってくることもあります.

最新 TeX Live を追いかける方法は色々考えられますが,一番簡単なのは SVN リポジトリを普通にブラウザで眺めることでしょうか.あるいはシンプルに tlmgr update による TeX Live アップデートを頻繁に行うことで,手許の環境を常に最新に保つ方法も考えられます.その上で新規にインストールされたパッケージ名をキーワードに texdoctlmgr info を用いてパッケージの詳細情報を閲覧します.ただし,tlmgr update を頻繁に叩いても大丈夫なのは「利用可能な TeX Live 環境が手許に複数ある」または「何か問題が発生してもすぐに自力で対処できる自信がある」人に限られるので,少なくとも一方の条件を満たせない場合は頻繁なアップデートは控えておいた方が安全でしょう.

TeX Live ユーザの場合は,当たり前ですが最新の TeX Live の情報を追うことで常に過不足なく「自分の手許で使うことができるパッケージ」の情報を得ることができます.

TUG newsletter や TUGboat から情報を得る

CTAN-ann や TeX Live の更新頻度は極めて高く,また基本的に新作パッケージと既存パッケージの更新情報が入り混じって流れてくるので,日頃から TeX/LaTeX に強い関心があるという方でないと圧倒されてしまう恐れがあります.月1程度の頻度で新作パッケージの情報だけを得たいという場合には TUG newsletter がおすすめです.これは世界規模の TeX ユーザ会 TeX Users Group (TUG)メンバー登録すると毎月配信されるものですが,実は newsletter 自体は TUG メンバーにならなくても購読・閲覧することができます.

TUG newsletter は TUG の代表(2021年現在は Boris Veytsman 氏)によって執筆されており,新作パッケージ情報に限らず,その月の TeX 界におけるニュースが(ときにユーモアを交えて)綴られます.特に末尾には必ず1ヶ月間の新作パッケージの名前と短い説明のリストが記載されるので,ゆるく TeX 界の動向を追いかけたい場合にはおすすめです.

速報性という意味ではやや劣りますが,年に4回刊行される TeX 専門のジャーナル TUGboat には毎回必ず The Treasure Chest というコーナーがあり,ここにもその四半期の新作パッケージ情報がまとめられます.このコーナーの編者は長年 TeX Live チームをまとめている Karl Berry 氏で,彼の独断と偏見によりおすすめパッケージには * 印が付くという付加情報もあります.TUGboat は最新号はメンバーのみアクセス可能で,次の号が出ると一般に公開されるというしくみのため,非会員がこのコーナーで新作パッケージ情報を得ようとすると概ね3ヶ月〜半年以上の遅れが生じると思われます.

日本語で情報が欲しい場合

残念ながら,最新の TeX/LaTeX パッケージ情報を定期的・網羅的にまとめている情報ソースは私の知る限りありません.ある程度パッケージ数は絞られますが,新作も含め多くのパッケージの情報が得られる場所はいくつか存在します.

必ずしも新しいパッケージの情報を中心にまとめている,というわけではないかもしれませんが,幅広く数多くのパッケージを日本語で実例付きで紹介しているブログとしては konoyonohana 氏の天地有情が有名です.

さまざまなパッケージの情報を求めて Google 検索し,このブログに辿り着いたことがある方は多いのではないでしょうか.

それから手前味噌ですが筆者も不定期で「面白い」と思った新作パッケージの情報を Twitter に投稿しています.例えば,最近のものを具体的に挙げると……

特に定まった検索用のハッシュタグはありませんが,私がパッケージ紹介する際はほぼ必ず CTAN 上のパッケージ個別リンクを含めているので,Twitter で “from:wtsnjp ctan.org” のようなクエリで検索をすれば事実上の「パッケージ紹介リスト」が得られます.

ただし,私が Twitter で紹介するパッケージは完全に独断と偏見で選んでいるため,網羅性はまったくありません.また実際にパッケージの機能を試してみるでもなく,ドキュメントを斜め読みしただけで紹介していることも多いので,内容の正確性についても保証はできません……

皆さんの Twitter フォローをお待ちしております😁